2011年05月08日

小話(ヤズミとマユミ)

昨日の夜、思いついたんだけど、今日になったら、あれ、どんな話だったっけ、なんて思ったり。

むーん・・・。

それにしても、文章ってどうやって書くんだったっけか。
とりあえず、リハビリリハビリ。

いつか(いつも)書いてみたいと思っている、ヤズミとマユミの話。
平成ウルトラマンのなかで、いちばん切ないのがアスカとリョウ、だと思ってたんだけど、8兄弟で結ばれちゃったから、そうすると、生きてるけど別れちゃってるヤズミとマユミが一番(てこともないけど)気になるカップルかも。

やっぱり、切ない人って気になるんだよねえええ。

ということで、ヤズミとマユミ、馴れ初めのころの話。
単に思いついただけの話だけど。





マユミがヤズミを部屋に招待してくれたのは、その日が初めてだった。
いや、招待と言うほどのものでもない。単に、どこかに行こうにも、車を失くしたマユミと、車を運転できないヤズミとでは、行動半径がかなり狭められてしまうと言うだけで、それでいて時間が取れないヤズミに、じゃあ、うちくる?とマユミが声をかけたのだった。

緊張して、部屋を観察する余裕もなく、ヤズミは通された部屋のテーブルにつき、マユミが作ってくれた食事をして、それから、他愛もないことをぺらぺらと喋った。
マユミがふんふんと聞いてくれるうちは大丈夫、と、でも、慎重に話題は選びながら、ヤズミは喋り続けた。マユミの嫌いな怪獣や戦いの話題だけは避けたい。
しかし、ヤズミの日常など高が知れている。その日常を占めているGUTSの仕事の殆どが怪獣がらみとあっては、話題などさらに少なくなろうというものだ。しかも、ヤズミは若く、人生経験も少なかった。あっという間に喋ることがなくなりそうになって、ヤズミは慌てた。
今の自分が沈黙の緊張に耐えられそうにないことだけは、確かだった。
言葉の出てこない自分は、水から出た魚が慌てて口をぱくぱくさせるようだと、ヤズミは思った。

すると、マユミがふいと立って窓辺に向かった。慌てて後を追う。
「ほら、見て。月がきれいよ。あ、火星よね、あれ。」
間違えることなく、まっすぐに火星を指差したマユミを見て、ヤズミは多少の驚きを隠せなかった。
「あ、馬鹿にしてるでしょう。私だって火星くらいはすぐに見つけられるんだから。」
小さく頬を膨らませたマユミに、罰の悪くなったヤズミは「そういえば」と話題を替えた。
火星に基地を作る計画が進んでいるらしい、というのは、ゆうべ聞きかじった情報だ。
リーダーがちらりと話したその情報に、シンジョウもホリイもレナも喰いついた。
シンジョウは前線基地としての役割について、ホリイは大気組成の定着方法について、レナは火星から見た地球について、それぞれが熱心に語っていた。
あれ。ダイゴさんはどうしてたっけ?あんな話だったら、すぐに乗ってきそうなものなのに。

ヤズミの話を、ふうん、と聞いていたマユミは、窓から夜空を見上げた。

「あたしだったら、木星に行きたいなあ。」

マユミの言葉に、ヤズミは苦笑した。
「・・・木星はガス惑星だから、人が住んだりはでき・・・ません。」
この間、年上なんだから敬語を使いなさい、と怒られたばかりなので、一応丁寧に呟いてみた。
「なに、そのガス惑星、って。」
きょとんとした眼をして、マユミはヤズミを見つめた。
「えーと、惑星の組成物質が気体ってことで、地球とか火星とかみたいに、岩石でできているわけじゃないっていうか・・・。」
「えっ、そんなのありなの?」
マユミは本気で驚いているようだった。
「だって、ちゃんと太陽の周りをまわっている惑星なわけでしょ?地球よりもずっと大きいんでしょ?シマシマだってあるわけでしょ?気体でできてる、ってそれ、どういうこと?」
「いや、僕も専門じゃないから大した知識はないんだけど・・・。」
一応謙遜しながら、丁寧に丁寧に説明する。
素直に感心して頷いてくれるのが嬉しくて、知っている限りのことをできる限り丁寧に。
生意気な態度をとって、怒らせたりしないように。

一通りの説明を聞いて、マユミは、ふうん、と頷いた。
「そうなんだ。じゃあ、木星も土星もガス惑星ってわけなのね。
あんなに大きくて、ちゃんとそこにあるのに、手を出したら突き抜けちゃう気体と同じだなんて・・・。なんか不思議・・・。」
思ったよりもずっと呑みこみの早い年上の生徒に、ヤズミは素直に、はい、と頷いた。


「それにしても、見直したわ。やればできるんじゃない。」
悪戯っ子のように、目をきらりとさせたマユミは、ふふふ、と笑った。
「それでも、私は木星が好きなの。知ってる?木星ってジュピター、豊饒の星なんだよ?
火星はマーズ、軍神の星でしょ。木星の方が平和で幸せで、・・・ずっといいと思わない?」
えっと、それは神話とか占いの話であって・・・
ヤズミは思わず言いかけたが、マユミは機嫌よく夜空を見上げている。
「そんな話を聞いたら、木星を探したくなるじゃない?図書室で本を借りて、木星の運行、とかって調べて、よく探してたんだ。でも、結構難しいのよね。金星は明るいし、火星は赤いから、この二つは分かりやすいんだけどね。」

白い横顔が夜の空に滲むようにぼんやりと浮かび上がり、ヤズミはなんだかどぎまぎとしてきた。
「あの、ぼく、帰ります。」
慌てて立ち上がると、猛スピードで身支度して玄関に走った。
「え、なに、どうしたの?」
「ごめんなさい、用事を思い出しちゃって・・・。また。また、今度。」
心臓がバクバクと音を立てているのを聞かれそうで、ヤズミは慌てた。
「大丈夫?気をつけて帰ってよ?じゃあ、また。」
はじかれたように顔を上げたヤズミの目に、心配そうなマユミの顔が映る。

また・・・。
また、って言ってくれた。

「はい!」

大きな声で答えると、ヤズミは「失礼します!」と勢いよく頭を下げてから退出した。
玄関を出ると、春とはいえ、まだ夜気はきりりと冷えている。
道に出て大きな深呼吸をついてからPDIを開いた。事情を知っているダイゴが、パトロールがてらデラムで迎えに行くからそこの近くで待ってて、と笑った。

ヤズミはPDIを閉じて、ぶらぶらと歩きだした。
ふと夜空を見上げると、木星がすぐに目に入った。
「ジュピターか・・・」
なんだか優しい光に見えるのはなぜだろう。

デラムは5分もしないうちにつくはずだ。
ダイゴさんは火星と木星のどっちが好きか聞いてみよう。そう思いついて、ヤズミは口許を緩めた。
posted by イラ at 01:54| Comment(0) | 小話
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